フェデラーの武器「SABR(セイバー)」とは?時差ボケ中のテニスで誕生!?

2022-12-07更新
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監修
ゴンちゃん
テニスベア・アンバサダー
慶應義塾大学ではレギュラー2番手として、全日本学生テニス選手権大会や全日本大学対抗テニス王座決定試合で活躍。卒業後はYouTuberとして活躍し一躍有名に。2020年12月よりテニスベア・アンバサダーとしてテニスベアに参画。

「SABR(セイバー)」というテニスの技をご存じでしょうか?

ロジャー・フェデラーの技のひとつです。今回は、このSABRの解説をしていきましょう。

SABR(セイバー)とは

SABRは「Sneak Attack by Roger」の略称です。「by Roger」とある通り、ロジャー・フェデラーによって編み出された技です。日本語に直訳すると「ロジャーによる奇襲攻撃」という意味になります。

SABRは、相手のサーブ、特にセカンドサーブをリターンするときの技です。通常、セカンドサーブになると攻撃性が落ちるので、リターン側にとっては狙い時。ここでSABRを使うのです。

SABRのやり方は、まず相手がサーブのためにトスを上げたとき、サービスラインくらいまで前に詰めます。そして、入ってきたサーブをハーフボレーのように早いタイミングでリターンし、そのままネットプレーにつなげます。

通常よりも早いタイミングでリターンが返ってくるため、サーバーは意表をつかれます。タイミングが外れたり、サーブ直後の準備が遅れてしまうことがあります。そのため、リターンのコースやスピードによってはリターンエースになったり、その後のネットプレーで優位に立てたりと、通常不利とされるリターンゲームで積極的に展開できるのです。

明確な定義はないですが、フェデラーはしばしばバックハンドでそれを行うので、一般的にはバックハンドをイメージする人が多いはずです。

フェデラーだからこそできる難易度の高い技

ただし、SABRは難易度の高いショットです。フェデラーだからこそ決められる技だと言っても過言ではありません。

相手に気づかれないように、サーバーがモーションに入ったら素早くサービスライン付近まで詰め、サーブがバウンドした直後にライジングで打つことが必要です。セカンドサーブとは言えど、その分回転もかけられていますし、対ストロークであっても難しいハーフボレーを、対サーブで実践するのは、プロ選手でも厳しいでしょう。

当然、中途半端なリターンになってしまうと逆に攻撃されてしまいますから、しっかりと狙って返さなければなりません。甘くなってしまえば、逆に相手のチャンスボールになります。 フェデラーだからこそ簡単に打っているように見えますが、SABRは非常に難易度の高いショットです。

SABR誕生のきっかけ

フェデラーがSABRを初めて見せたのは2015年のシンシナティオープンでした。SABRが誕生したのは、その大会での練習中でした。

ブノワ・ペールと練習していたフェデラーは、さっさと練習を切り上げようとしていました。時差ボケで疲れていたフェデラーもペールも体調がよくなかったからです。しかし、コーチから数ゲームするように言われます。そこで、早くプレーを終わらせようと、ふざけて相手のサーブを普通よりも速いタイミングで返したのです。

それがうまく決まったので、その次も、そしてその次の練習でも試してみました。日頃からもっと早くリターンを返すように言っていたコーチは、ウィナーもとれるその戦術を採用して、試合でも使うことをアドバイスしたのだそう。それ以降、SABRはフェデラーの必殺技となったのです。

フェデラーがSABRを使った試合

SABRは代名詞ともいえる必殺技ですから、フェデラーはたびたび試合で披露しています。

2015年のシンシナティオープン

SABRは2015年のシンシナティオープンの練習中にフェデラーが編み出したショットですが、さっそく本大会でも使っています。まず会場を沸かせたのはアンダーソン戦でした。

ビッグサーバーであるアンダーソンのサーブを物ともせず、フォアハンドでSABRを打ったボールはベースライン付近に落ちるとても深い返球でした。アンダーソンはやっとの思いで返球することしかできずフェデラーはスマッシュを打ってポイントを取っています。

そして、ジョコビッチとの決勝でも、随所でSABRを披露しています。第1セットの序盤ではSABRが見事に決まります。そして、第1セットのタイブレークでもまた、SABRを使ったのですが、なかなかシビれる場面でした。

フェデラーがタイブレークを3-1でリードしている場面で、ジョコビッチのセカンドサーブ。フェデラーは、ジョコビッチがセカンドサーブを打つと同時にサービスライン近くまで出てきて、フォアハンドでSABRを打ちました。ジョコビッチはバックにきたボールを打ち返したものの、ネットは越えません。このポイントで完全に流れが傾いて以降、ジョコビッチはタイブレークで1ポイントも取れずに第1セットを失います。

第1セットのタイブレークを引きずるような形で、ジョコビッチは3つのダブルフォルトで第2セットのファーストゲームを落としてしまいます。ダブルフォルトが続いたのは、SABRを過度に警戒してしまったからかもしれません。結果、7-6、6-3でフェデラーが優勝を掴みました。

2015年の全米オープン

2015年のシンシナティオープン直後の全米オープンも、決勝の相手はジョコビッチ。紹介している動画の場面では、バックハンドでとてもきれいなエースを決めています。随所でSABRを使ったからか、ジョコビッチにロブを使われるなど攻略されているような印象もあり、全米オープンはジョコビッチが優勝しました。

その頃にはメディアへの露出も高まり、だんだんと「SABR」という名称も定着しつつありました。その試合は負けてしまったものの、観客も沸かせたのでした。誕生直後の新技だというのに、すっかりモノにしたのですね。 他にもサム・クエリーのようなビッグサーバーでも、ラファエル・ナダルのような試合巧者でも、華麗なSABRを決めています。

キリオスもSABRを活用

トリッキーなプレーが持ち味のキリオスも、SABRを使います。しかも、成功率が高いのです。SABRは難しいショットですが、抜群のセンスで決めてみせます。キリオスは強烈なサーブをはじめパワフルなプレーのイメージもありますが、器用で小技もうまいと言われるので、SABRも自分の武器にできたのでしょう。

 

一般人がマネすることは難しい

フェデラーのプレーを見ているとSABRに挑戦したくなりますが、技術と反射神経とセンスが問われるショットですから、一般プレーヤーにはなかなか難しいことです。

ネットにかかってしまったりオーバーしてしまったりと、成功する確率が低いでしょう。しかし、セカンドサーブがあまり威力のないサーバー相手で、自分がボレーに自信があるなら挑戦する価値はあるかもしれませんね。

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