テニスの審判の役割 審判がやることとは
目次
スポーツの試合には、公平なジャッジをしてくれる審判の存在が欠かせません。もちろんテニスの試合にも審判がいます。
プロの試合を現地やテレビで観戦しているときは、必ず審判がいます。しかし、英語(たまにフランス語)でコールされることがほとんどなので、審判の役割を理解していないと「あれ、今何が起こったんだ?」となって展開についていけなくなることもあります。
あるいはジュニアや一般の草トーナメントの試合では、自分たちでジャッジを行ったり、他の人の試合の審判をやらなければいけないケースがあります。審判であるからには間違ったことはできませんので、当然やるべきことを理解していなければ務まりません。
この記事では、そうした問題が解決できるよう、テニスの審判の役割にスポットを当ててご紹介します。
審判を担う機会は意外と多い
どんな競技でもそうですが、公式大会などで審判を行う人は資格を保有しています。しかし、すべての試合でそんな資格保有者が審判をしてくれるわけではなく、一定のレベルに達するまでは、自分たちでその役割を担うわなければなりません。
ジュニアの試合や草トーナメントでの負け審
ジュニアの試合でも、全国大会や連盟のポイントが獲得できる大会の場合、公式の審判がつきます。しかし、そこに至るまでの予選やいわゆる草トーナメントでは、自分たちで審判を行うケースが多くあります。
一般的なのが「負け審」です。負け審は、自分がエントリーした大会で負けてしまった人が、次の試合などの審判をする制度のことを言います。筆者は中学生の頃からよく負け審をやっていました(恥ずかしい)。
慣れればどうってこともないのですが、初めて審判台に座るとかなり緊張します。また、当然ですがジャッジ次第で選手の結果が左右されるため、やはり緊張します。
セルフジャッジ
そして何と言っても、多くの試合で採用されているのが、審判なしで自分たちでジャッジを行う、セルフジャッジです。自身がイン・アウトなどを申告し、ポイントをコールするのも自分たちです。
審判は、公平に試合を進めるためにジャッジしています。その代わりであるのがセルフジャッジであるため、正直に誠実にジャッジすることが求められます。
日本テニス協会のホームページに、『セルフジャッジ5原則』が掲載されています。テニスをしている人は必ず目を通して、お互いに気持ちのいいゲームをしましょう。
審判の種類
プロテニスの試合を見ていて、「何人も審判がいるけど、こんなに必要なの?」「審判って何をやっているの?」と思ったことはないでしょうか。それぞれの審判と役割を勉強していきます。
主審(チェアアンパイア)
主審は「チェアアンパイア」と呼ばれる通り、コート横の高いイスに座っている審判のことです。ゲームのカウント及びコール、イン・アウトやフットフォルトなどのジャッジ、ポイント間やコートチェンジなどの時間管理を行います。コート上での判断はこの主審に任せられるため、言うなれば審判は絶対的存在です。
テニスプレーヤーのみなさんが審判をやるケースがあるのは、ほとんどがこの主審です。具体的なジャッジやコールについては下の方でご紹介します。
プロの試合では6ゲームごとのボールの交換、ガットの張替え要求、ドクターコール、選手の違反行為への対応、最近ではチャレンジシステムの要求など幅広い担当領域を、瞬時に冷静に判断することが求められます。具体的なコールについては後ほどご紹介します。
プロの試合の主審は、線審よりずっと経験を積み、試験や審査を通ってきた人たちです。主審の中でもランクがあり、グランドスラムのセンターコートで主審を務める審判は、トップレベルなのです。
線審(ラインアンパイア)
線審は、文字通り、ラインをチェックしています。テニスコートには、ベースライン、サービスライン、サイドライン(シングルス/ダブルス)と複数のラインがあります。中には主審から遠い位置にあって見づらい場合もあるため、各担当領域であるラインにおけるジャッジを線審が行います。
しかし、あくまで主審が一番高い権限を持っているため、主審が線審のコールを覆したとしても、線審は何も言うことはできません。
また、プロの試合では選手がトイレットブレイク(トイレや着替えなどでコートを離れる)をとったときには、選手が(例えばコーチからのアドバイスを受ける等の)違反行為をしないように線審が付き添います。
補助員としてのボールパーソン
プロの試合では、試合進行をよりスムーズに行うため、ボールパーソンがいます。ラリー中は隅っこでじっとしていますが、ポイントが途切れると、ボール目がけて忙しそうに動き回ります。
ポイント間に、ボールを回収してサーバー側のボールパーソンにボールを転がし、その間に選手にタオルを渡し、サーバーにボールを出し、コートチェンジの間には選手のためにドリンクを取ってきたり傘などで影を作ったりなど、本当に大変そうです。
臨機応変かつ機敏に動く必要があるので、ボールパーソンも事前に訓練が行われています。センターコートに入れるのは、やはり優秀なボールパーソンです。決勝戦では、表彰式の後に選手と並んで写真に写っていますものね。栄誉なことです。
ちなみに、日本で開催される大会では、テニス経験者を中心にボールパーソンが募集されていることがよくあります。大会規模が大きければ大きいほど、選抜条件が厳しくなります。
試合中のコール
どの国の選手でも理解できないと意味がないので、テニスの審判用語は決められています。試合をより楽しんで観戦するためにも、また正しいコールをするためにも、しっかりと理解しておきましょう!
試合形式の説明と開始
選手が登場してネット際に揃うと、主審は試合のルール説明をしたりコイントスを行ったります。
- 試合開始の宣言
The best of 3 set match. Nishikori service to play
いよいよ試合が始まるときは、上記のようにコールします。意味は、「まず○○さんのサーブから、○セットマッチの試合をベストを尽くして行います」です。
セルフジャッジの場合には「お願いします!」と言ったり、第三者の試合の主審を行う場合には省略して「1 set match, play」という場合がほとんどです。
ウォームアップやチェンジコート時の休憩が終わるときには「タイム」とコールします。
ジャッジ
-
イン/アウト
インの場合はコールしません(線審はジェスチャーで示します)が、ラインの外に打球が落ちれば「アウト」とコールします。サーブの場合は、サービスボックスの外であれば「フォルト」とコールします。ダブルフォルトの場合には、フォルトとコールするものの、ダブルフォルトとはコールしません。 -
レット
「レット」とはプレーの中断のことで、ほとんどの場合プレーのやり直しとセットであるため、その意味も内包しています。よく使われるのは、サーブがネットインした場合で、サーブをやり直します。他にも、プレー中に隣のコートからボールが飛んできたり、時には動物が入ってきたり、プレーが継続できないときも「レット」とコールし、ポイントのやり直しをします。 -
主審によるオーバーコール
線審の「イン・アウト」のジャッジが違っていたと主審が判断した場合、主審はジャッジの訂正を行います。これをオーバーコールと呼びます。
カウントのコール
テニスのポイントを表現するカウントでは、以下4種類の数字と、その他の特定のカウントを表す言葉が使われています。
- 0(ラブ)
- 15(フィフティーン)
- 30(サーティー)
- 40(フォーティー)
- 同点(オール)
- 40-40(デュース)
- Adv(アドバンテージ)
サーバーの点数を先に読み上げるので、サーバーが「0」でレシーバーが「30」のときは、「0-30 ラブサーティー」です。同点のときは「○オール」、40-40では「デュース」とコールします。デュースに入ってどちらかがポイントを取ったら「アドバンテージ○○(ポイントを取った選手名)」となります。
- ゲーム/セット終了
Game (won by) Nishikori. Game count 3 games to 2, Nishikori leads
ゲームやセットが終わったときは、上記のようにコールします。ゲームカウントやセットカウントをコールした後、その時点までにどちらの選手がリードしているかをコールします。
- 試合終了
Game set and match won by Nishikori. Set count 2 sets to 1
そして、試合に勝負が着いたら上記のようにコールします。ゲームやセットのときのコールに、試合を意味する「マッチ」を足すだけです。
このコールによって試合終了。主審と選手たちが握手を交わします。試合中は気が抜けなかった審判たちも一息つくことができます。